相場のリスクは基本的には見えたリスクです。リスクは大きく分けて、3つに分類できます。
1つは通貨や金利、株価、商品、それらのデリバティブなどの価格変動のリスクを意味するマーケットリスク。途中償還条項付きのコーラブルの債券や、住宅ローンを下敷きにしたモーゲッジバックド・セキュリティーズ、自動車ローン、消費者ローンなどを下敷きにしたアセットバックド・セキュリティーズといった債券の、期限前の償還リスク。類似商品間のスプレッドの伸縮を問うベイシスリスクや、金利商品の価格に置き換えられるインフレリスクなどがこれに含まれます。
2つ目は投資物件の安全性、信用度を問題とするクレジット(信用)リスク。株式や債券の発行体が潰れないか、元利金が回収できるかを問うリスクです。買った証券が無事に受け渡されるか、あるいは換金した現金がきちんと口座に振り込まれるかを問うデリバリーリスク、常に正常な価格での売り買いが可能かを問題とする流動性リスクなどもこれに含まれます。国家そのものの信用を問うカントリーリスクも当然ここに含まれます。この第2のリスクは、事前にある程度見えているリスクですから、高利回りなどに惑わされず、慎重に判断しましょう。
3つ目はイベントリスク。予期せぬ突発的なことが起きるリスクです。突然の吸収合併や不正の発覚、大きくは戦争、革命、国交断絶などで証券の価格が大きく変動する、もしくは紙切れ同然になってしまうリスクです。当初考えられなかった税制の変更や規制の導入、廃止なども、金融商品の価格を劇的に変えてしまいます。この第3のリスクには分散投資で対応するしかなく、そこに投資した部分については、なかなかヘッジできません。旅行先の国で予期せぬ革命が起こり、帰国できなくなったようなものです。交通事故なども同様です。これはあらかじめ備えておくことが、事実上不可能なリスクなのです。それこそプレミアムを払って、保険にでも入るしかありません。政治システムの違う国、最近まで違っていた国は要注意ですが、クレジットリスクを超えては、あんまり深く考えないほうが現実的です。
相場で私たちが通常問題としているのは、基本的にはマーケットリスクです。マーケットリスクを軽減する最良の方法は、投資額を減らすことや、デュレーションを短くすることです。すなわち、期待するリターンを最小にすることです。やらねばやられないのです。しかし、それではマーケットリスクはなくなっても、やらないことのリスクを背負い込むことになります。進むことにだけリスクはあるのではなく、立ち止まることのリスクも大きいのです。
年金の資産配分などでも、プロに任せるとリスクがなくなると思うのは間違いです。同じ車に乗っていながら、運転席より助手席の方が安全だと思うようなものです。期待するリターンが同じときは、どのようにしても同じ量のリスクを取らねばなりません。ヘッジとは、あるリスクを別のリスクに付け替えることでしかありません。つまり、当事者であるリスクを避けることは、傍観者であるリスクを取ることを意味するのです。
3つのリスクが理解できたなら、自分の取りやすいリスクを適量取りましょう。リスクとは避けるものではなく、管理するものなのです。
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